京都市内最北端の商店街「御薗橋801商店街」

「御薗橋801商店街」は、世界遺産に登録されている上賀茂神社（商店街特別会員）から歩いてすぐのところに位置する京都市内最北端の商店街です。覚えやすいユニークな名称は、商店街の全長が800メートルであることと、そこから未来に向かって1歩を踏み出そうという思いから付けられました。地域の清掃活動も率先して行う商店街キャラクター、801（やおい）ちゃんが活躍していることでも知られています。

こども食堂「やおいちゃんキッチン」

キャッチフレーズは「たくさんの笑顔あふれる商店街」。幅広い世代に向けた取り組みを行っていますが、その中心になっているのは誰もが気軽に立ち寄れる「801広場」。こども食堂「やおいちゃんキッチン」もそのスペースで開催されています。毎月2回（第１・４火曜日）のペースで行われるこの取り組みは“いろいろな人を笑顔にする”目的を掲げて6年前に始まったもの。コロナ禍においても1度も休むことなく、３～12歳までの子ども達に具材たっぷりの甘口カレーを無料で提供し続けています。

多い時で300食ものカレーを仕込むのは商店街を支えるお店の各店主。野菜やお肉などの具材やルー、お米は寄付や企業のサポートを受けたり、商店街組合費で賄っています。準備は元料理人の増田さん、大藪さんを中心に、ニンジンやジャガイモなどを切るところからスタート。

４～５時間かけてカレーを煮込み、7台もの炊飯器でご飯を用意します。食物アレルギーを持つ子どももいるため、使われている食材は毎回一覧表にして貼り出します。

「よく大変ですねと言われますが、私たちはそんなことはちっとも思っていなくて、子どもたちが美味しい、ありがとう、また来るね、と言ってくれるのがうれしい。みんなの笑顔を見たくて続けています」と田中理事長は話します。

小学校高学年のお姉ちゃんが低学年と就学前の妹を連れて。習い事の帰りに1人で訪れた男の子。学校帰りに手をつないで来るきょうだい。保護者を伴わずに訪れる子が寂しい思いをすることがないよう、広場内に入れるのは子どもだけ。次々と来場する子ども達はいずれも行儀よくカレーを味わって行きます。大盛を頼む子、3杯お代わりして平らげる子もいるそうです。

人との関わり方を学びながら成長する

「今の子ども達は知らない人に怒られることがないでしょう？でも、昔は悪いことをしたら、自分の子であろうが、よその子であろうが分け隔てなく怒ったものです。だから、私たちは挨拶ができない子、行儀の悪い子は遠慮なく叱ります」（田中理事長）。初めはぎこちなく過ごしていた子も人との関わり方を学ぶなかで成長します。空になったお皿を返しながら“ご馳走様でした！”と元気よく発せられる声に大人たちは“よろしゅうお上がり”と応じます。今の世の中では少し懐かしく思える光景が見られました。

仕事帰りに2人のお子さんを連れてきたお母さんは「帰宅後ってあれもこれもしなければならない上に子どもたちが空腹だと、早く食事を用意しなければと焦ってしてしまうのですが、ここでカレーを食べさせてもらえると落ち着いて家事ができます。とても助かっています」と笑顔で話されました。